本のなかを旅する日々〜かりあの読書日記〜

本大好きのその周辺。思ったことや読んだこと。

クオ・ワディス(上)(中)(下)

 

あらすじ

主人公はほぼほぼウィニキウスというローマの貴族だが、「ほぼ」というだけあって、登場人物のほとんどが掘り下げられてあって誰が主人公とはもはや言うことができないほど。
舞台は暴君として歴史に知られる皇帝ネロがおさめるローマ帝国時代。
そんな時代、ウィニキウスが心惹かれてしまった娘はキリスト教徒…。ネロといえばキリスト教徒迫害として知っている人も多いが、まさに、彼らに無惨に注がれる受難を描いているのがこの小説である。

 

上・中巻でやめるな!

この本、上・中・下の3巻に分かれているのだが、まあ、長いよね…w 長いんだ…w
しかし、この本の全ては下巻のためにあると言っても過言ではないほど。上巻と中巻は下巻に向かっていくために読者にはしっかりと登場人物たちを観察していてほしい。
長いと言っても割と夢中で読めるのが魅力ではあるのだが、どうかこの本を下巻を読み終わらずして評価するのはやめてもらいたいと、読了した今強く思う。

 

感想

正直読み終わった今、圧倒されている。いまだに。
久しぶりに小説で泣いてしまいました…。上記した通りこの本は下巻に全てが凝縮されているので、下巻はほとんどあっという間に読了し、息がつまり、涙してしまうところがほとんどだった。
キリスト教徒たちに訪れる凄惨な受難…。この本こそ、人生に行き詰まって立ち止まってしまっている人にこそオススメしたい
信徒たちの受難の中、救いを求める人々に向かってペテロが次のように言う。かなり印象的な言葉だったので、付箋が貼ってある。

 

「よろこびの中で刈り入れるために、涙の中で種子を蒔きなさい。 なぜ悪の力を恐れるのです。 この台地の上、ローマの上、都の城壁の上には、あなたがたのうちに宿られた神がおられるのです。 石は涙に濡れ、砂は血を吸い、墓穴はあなたがたの死骸で埋まるでしょうが、それでもわたしは申します。 勝つのはあなたがたです! 主はこの罪悪と、圧制と、驕慢の都の征服に向かおうとなさっておられます。 あなたがたは主の軍勢なのです! 主ご自身が苦しみと血とによってこの世の罪をあがなわれたように、あなたがたも苦しみと血によってこの不義の巣をあがなうことを、主は望んでおられます! …‥…わたしの唇をとおして、あなたがたにそう告げておられるのです!」

 

この作者、シェンケーヴィチはノーベル文学賞を受賞している。受賞したのはこの作品ではないようだが、描写力が「さすがノーベル賞レベル…」と思わずにはいられない。あたかも自分がキリスト教徒として磔にされ、見世物になった目線で人々を見渡しているかのように錯覚して思わずハッとして本から目を挙げてしまうこともあった。

 

しかしこの本を読了していまふつふつと思うのは、この作者シェンケーヴィチはポーランド出身で、彼の死後30年ほどで、あの恐ろしいナチスドイツによるホロコーストがこのポーランドを襲うのだ。
人間による大量虐殺は歴史上何回も何回も起こっている。理性を欠いたかのようなこの事件に、理性をもっているがゆえに人間の懊悩がよりいっそうの悲惨を呼ぶ。理性をもっているがゆえに苦しむ。だからこそ、理性でもってこの歴史的虐殺について忘れずに考えていきたいものだ。

 

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