かりあの読書レビュー

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世界のすべての朝は/パスカル・キニャール

 

 

 

あらすじ

 

死者に届く音楽は何を老音楽家にもたらすのか。 

 帯の一文である。

妻を亡くした喪失感と哀しさから立ち直れない1人のヴィエラ奏者。彼には2人の娘がいた。

ある日、彼のもとに弟子にしてほしいとやってきた青年。それが彼らを静かなる混乱に陥れていく。

 

 

感想

 

素晴らしかった。

たった100ページちょっとの短い話なのに、あまりにも濃密。

読み終わったときには2時間のフランス映画を見たかのような心地だった。

妻を亡くしたサント・コロンブというヴィオラ奏者と2人の娘、マドレーヌとトワネット。

サント・コロンブは妻が亡くなってしまった悲しみから心をほとんど閉ざし、音楽さえも自分の殻に閉じ込めてしまう。

娘たちには自分の音楽を伝授し、静かに生活しているところに、弟子入りを志願するマラン・マレがやってくる。そのことで静かな崩壊が起こってくる。

大して大事件が起こることもない。ただひたすらに静謐な物語。それなのになぜか読ませる。あまりにも文章が美しいからかもしれない。

今でさえ読み終わってからの余韻が抜けないでいる。本当に大して事件が起こるとかそういうことがないにも関わらず、自分の中での印象が強烈だった。

パスカルキニャール…。訳文も本当に読みやすく、美しくて良かった。

うちにある積読キニャールをまだ何冊か読んでみようと思う。

それにしてもこういう良い文学は相も変わらず絶版になるのが早いなー…。

ちなみにこの本は以前、早川書房から出ていた『めぐり逢う朝』を熊本を本拠地として九州限定で展開している出版社「伽鹿舎」が復刊したらしい。素晴らしい。同じ九州民として嬉しくなる。

 

 

 

早川版の値段は割とすごいことになってる……。

 

 

 

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