かりあの読書レビュー

読んだ本のレビューを書いてます

ウォーターランド/グレアム・スウィフト

 

 

 

 

うーーーん、実に味わい深い読後感!

全部で519ページ。なんとも分厚い小説である。

 

 

俺氏、出だしに怯む

 

最初の出だしで正直怯んでしまった。というのも、小説とは別にフランス革命についてとか、果てはウナギについてとか、話があっちにこっちに飛んでいくので「お、おう…」となり、これはもう最後まで読めない系?それ系?とかなんとか自問しながら読んでいたのである。

しかし、登場人物たちの謎が合間合間でどんどん深まっていく上に、なんとも語り手が饒舌である。乗せられるかのようにどんどこ読み進めていってしまう。

 

 

そして突然。

 

 私の兄はいったい何者なのだ。兄はいったい何でできているのだ。

 どうしてもあの鍵を見つけなくてはならない。

 

 

え…。どうしたどうした…。

305ページ。

このパートからどんどん謎が解けていくのである。

 

 

遅ればせながらあらすじを

 

語り手は引退に追い込まれている歴史教師のトム・クリック。

彼の妻であるメアリは突然赤ん坊を誘拐してしまう。そのことで退職に迫られたトム・クリックは、歴史の授業で謎に満ちた自分の一族の歴史を語るのである。

父親のヘンリー・クリック、兄のディック、母のヘレン。祖父のアーネスト・アトキンソン。そして妻のメアリ。死んだフレディ・パー。

殺人。近親相姦。水気を帯びたその土地で起こる数々の出来事。

 

 

感想

 

正直に言って自分が好きな文体やプロットではなかったなと思う。ただそれは改めて全部読了してから冷静な頭で思うことであって、この500ページを読ませる力は正直すごすぎると思う。普通なら話が脱線につぐ脱線の時点でもう嫌になって投げ出してしまう。なのにそうさせない作家の力量の凄まじさを、いまひしひしと感じている。

最初にも書いたけど非常に味わい深い小説であり、好きな人は完璧にどハマりしてしまうんじゃないかと思う。

 

うーん、それにしてもやっぱりしみじみと海外文学はいいなぁと思わざるを得ない。そして読書ってやっぱり最高に贅沢な体験だ…。

 

さて、感想の最後に、読んでいてなぜかじんわり胸に突き刺さった言葉を引用して終わりにしたい。

 

 しかし神様はもうお話になどならない。それを知らなかったのかい、メアリ?神様はとうの昔にお話になるのをやめてしまった。神様はあの空の上で、もう見まもることもしていらっしゃらない。僕たちはもう大人になってしまって、あの人を、天にいらっしゃる僕らの父を、もう必要としないから。僕らは自分で自分の面倒を見ることができるから。この世界をどう理解しようとお前たちの勝手だと、神様は僕たちに任された。巨大な都市の真ん中にあるグリニッジ、まさに神様を見つめかえすために、かつて人々が天文台をつくったあそこでも、夜、街灯のオーロラの上にあるはずの、神様が止まれとお命じになった星たちを見ることはできないのだ。

 神様というのは、神様にも見放されたような片田舎に住む単純素朴な人々のためのものなのだ。

 

 

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