かりあの読書レビュー

読んだ本のレビューを書いてます

モーリス / フォースター

 

 

 

<Kindle版>

 

 

 

 

 

凄まじい読書体験をした…。

今回、この感想を正直言ってどう書こうか悩みまくっている。

 

 

二人の青年

あらすじのようなものを語るとするならば、それは二人の青年モーリスとクライヴのーーとくに「モーリス」という名の青年にスポットライト当てたーー人生の物語であろうと思う。本当にただそれだけなのだ。しかし少し事情が違う。彼らは20世紀初頭を生きていて、その時代には犯罪とされていた同性愛者だったということ。そんな彼らの愛憎劇を描いている。

 

 

愛することが許されない時代

全体を通してひしひしと伝わる、この「愛することが許されない」という時代の風潮。それは彼らのなかにも根付いていて、愛しているのにどうしても無意識に抗おうとしてしまう悲しさが全面に溢れている。

今、この時代に生きていれば、モーリスもクライヴもきっと素直に恋人同士になれたであろう。だけどそうはならない。なれないのだ。

 

 

クライヴ

正直、私はクライヴに対して複雑な感情を抱いている。

モーリスはもともと自分の感情に気づいていなかったのだ。

もしもクライヴが彼にその気持ちを気づかせなかったならば、きっと彼は苦悩することなく、当時の「普通の男」としての人生を送ることができたかもしれない。それなのに、彼の意識を目覚めさせ、最終的にクライヴの愛を受け入れたモーリスを結局はねのけてしまうクライヴに私は怒りを覚えながら読んでいた。

しかし、後半のあの終わり方、そして読了後にぼんやりと思うのは、モーリスは勇気を持って自分の持って生まれたものと対峙し戦い続けているのに対し、クライヴはそれができなかったんじゃないかということ。

彼は最終的に自分に言い聞かせ、嘘をつき続けているんじゃないかと、後半になってからハッと気づいた。

もしも、自分が同じ立場なら、私はモーリスのようにはいられないかもしれない。そうだとしたらきっと私はクライヴのように自分に嘘をついてしまうだろう。そのことに気づくと、どうにも彼に対して同情を覚えてしまった。

とても一言では語りつくせない人物だ。

 

 

全体の感想

この小説はものすごく淡々と語られるだけの小説だと思う。劇的な事件なんて全くないし、ただただ、二人の男の人生にスポットを当てて、それについて滔々と語っていく。それなのに目が離せなくて、わりかし忙しくて時間が取れなかったにも関わらず、1日半で読了。怒涛のごとく読み進めてしまった。

あっさりと描かれているようにも思えるのに、感じる引力のようなエネルギーは一体なんなのだろうかと思ってしまうくらい、圧倒的な力を持った小説だと思う。

この物語の終わりに、著者であるフォースターのはしがきが載せられている。

そこには「いずれか二人はハッピーエンドで終わらせたかった」とある。

確かにあの終わり方ならハッピーエンドとも取れる。だけど本当に彼らは幸せな形をとったのだろうかと疑わざるを得ない。それは小説の終わり方に含みがあるせいかもしれない。本当にフォースターは、ハッピーエンドにしたんだろうか…。読み終わった今でも悶々としてしまう。結局クライヴだって気持ちに嘘をつき続けて生きてきたのではないのか、とか。

何度も言うように本当に淡々とした小説なのに、読後の余韻が凄まじすぎて、ぐらんぐらんしてしまう。脳内に焼印のように何かが押し付けられたような気分だ。

もしかしたらいつか再読するかもしれない。私にとってはそんな小説だった。

 

それにしても光文社新訳文庫は毎度毎度いいラインナップだよなー。またこの中ならそのうち古典も名作を漁ってみようと思う。

 

それではまた。

 

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