本のなかを旅する日々〜かりあの読書日記〜

本大好きのその周辺。思ったことや読んだこと。

Xのアーチ / スティーヴ・エリクソン

 

 

 

 

エリクソンの怪傑作。10年ぶりのスティーヴ・エリクソン小説。今回も迷子になりまくりながら読了まで走り抜けた。

 

 

あらすじ

 

公式のあらすじを抜粋してみる

 

フランス革命直前のパリ。アメリカ独立宣言起草者として名高いトマス・ジェファソンは、自らの美しき女奴隷で愛人のサリーを連れて帰国しようとする。トマスとともにアメリカに帰り、再び彼の奴隷になるか、パリに残って自由人の黒人でい続けるか。サリーの決断により、愛と快楽、自由と隷属をめぐる、時空を超えた目くるめく物語が幕を開ける……現代アメリカ文学最重要作家の超弩級の傑作!

 

と、こうなっているものの、この話はトマス・ジェファソンとサリーの物語という枠外を平然と超えていってしまう。

あっという間に時空を超え、時代を超え、過去未来さえ超え、どんどん加速していく。

読者はこの物語に一度取り込まれたら出ていくことは許されない。

 

 

全体の感想

 

正直なところ、今回の感想は短いものになるんじゃないかと思う。

もうね、どう書いていいのかわからないのだ。というか、わかったふりして長々と書くのは、ある意味、この小説に対しての冒涜になってしまうんじゃないかとすら思えてしまう。

 

読み終わった瞬間思う。

「私は一体何を読まされたのだろう」

 

これは悪い意味では決してない。何かとんでもない傑作を読んだ気がするのに、それを評価できるほどの器が私の中には見つからないのだ。これを正当に評価できる人間はこの世のどこにもいなんじゃないかとすら思えてくる。

この作者であるエリクソン自身、この小説を書いた後に、もう自分が小説を書くことができなくなったんじゃないかと思ったらしい。それほどこの作品に力をこめ、と同時に、この小説からいろいろなものを吸いとられたのかもしれない。

 

この小説はあらすじで書かれているような言葉で簡潔にあらわせるものではない。

言葉で書いてあるものなのに、その言葉が集合体となって一冊の本になってしまった時に、この本はもはや言葉では表せないものになってしまっている。

一体何が起こっているのか、何を読ませられたのか、読者は常に傍観者として放り出される。

しかし、何が起こっているのか、そこで何が行われてしまっているのか、読者である私たちは見たくて見たくてしょうがない。だからこそ、この言葉によって紡がれた、言葉にならなくなった物語をどんどん追いかけていく。

しかし物語はどこにもたどり着くことはない。

だまし絵の階段のように、そこにあったはずの階段は、ふと気づくとただの自分の認識の誤解であり、階段など初めからないのである。

 

時代、次元、現代、過去、未来。

一つ一つのピースは繋がったふりをして、全く別の物語を語る。

読者はどこまでもどこまでも、メビウスの輪のふりをした偽物の輪の中をぐるぐると循環することになる。

 

 

 

   

 

 

スポンサーリンク